
荒川線が通るのどかな風景

- 『都内に住んでいるけど、都電には乗ったことがない』
- 『都電の昭和レトロな雰囲気がたまらなく好き。一度は乗ってみたい』
ところで、都電に限らず路面電車は全国には沢山あります。広島や長崎を始め、岡山、富山、愛媛(松山)、熊本、高知、札幌、函館辺りが有名なのではないでしょうか。探せば他にもあるかと思います。
東京にも、実は路面電車は二つあります。『え?ひとつじゃないの?』と思いがちですよね。私もそう思っていたんですが…。正確には都電では『都電荒川線』のひとつしかありませんが、路面電車は他にも『東急世田谷線』もあるのです。
さらに時代をさかのぼってみれば、都電は都内にいくつもの路線が張り巡らされていました。ですがそのほとんどが廃止され、今となっては都電荒川線のみが残る形となりました。
今回は、そんな都内で唯一現存している都電、都電荒川線の路線図や乗り方、見どころなどを紹介したいと思います。なお、最近では「東京さくらトラム」なんて聞き慣れない呼び方もされているそうですが、その辺りについても触れたいと思います。
都電荒川線の路線図

出典:東京都交通局
都電荒川線は、東京23区内の新宿区『早稲田駅』から台東区『三ノ輪橋駅』にかけて、12.2kmに渡って運行している路面電車です。古き良き時代とでもいいましょうか、電車から見える風景はなんとなく昔懐かしい雰囲気がありますよね。
具体的には、新宿区⇒豊島区⇒北区⇒荒川区⇒足立区⇒荒川区⇒台東区というように巡り、東京23区でも北側に位置している路線です。
全30駅、早稲田~三ノ輪橋間を約1時間かけて運行しています。
- 早稲田
- 面影橋
- 学習院下
- 鬼子母神前
- 都電雑司ヶ谷
- 東池袋四丁目
- 向原
- 大塚駅前
- 巣鴨新田
- 庚申塚
- 新庚申塚
- 西ヶ原四丁目
- 滝野川一丁目
- 飛鳥山
- 王子駅前
- 栄町
- 梶原
- 荒川車庫前
- 荒川遊園地前
- 小台
- 宮ノ前
- 熊野前
- 東尾久三丁目
- 町屋二丁目
- 町屋駅前
- 荒川七丁目
- 荒川二丁目
- 荒川区役所前
- 荒川一中前
- 三ノ輪橋
1時間で30駅ということは、1駅あたり2分。歩いても行ける駅間ですね。実際に乗ってみると分かりますが、バスのようにゆっくりと走行しています。東京観光でぶらり途中下車なんかにも最適です。
路線の大部分は専用軌道となっていて、自動車と同じ道路部分を運行するのはごく一部。飛鳥山駅から王子駅前駅の区間だけが自動車と区別なく運行している併用軌道区間です。この区間では渋滞に巻き込まれたり信号待ちがあったりと、まるでバスと同じですね。
都電荒川線の乗り方

- 『都電には乗ってみたいけど、乗り方がよく分からない…』
- 『乗る時に恥ずかしい思いをしたくない』
このように思っている人は少なくないのではないでしょうか?心の準備が必要、私も最初はそうでした。
昭和レトロな雰囲気が好きなので、一度は都電に乗ってみたいという気持ちこそあったのですが、どうやって乗ったらいいのか、どのように切符を買えばいいのか分からず、結局だいぶ先延ばしに。
たかだか乗り方が分からないだけで無駄に緊張しちゃうっていうチキンぶり…

- 『前から乗るの!?後ろから乗るの!?降りる時は!?』
- 『整理券はあるの!?』
- 『運賃の支払いはどうすれば!?両替もできるの!?』
このように、東京に来て初めてバスに乗った時「えっ、前から乗るの!?しかも前払いなの!?」と同様な不安を感じましたね。でもそんな心配は要りません。
都電の乗り方はとても簡単!

気負わず気軽に乗れます
都電の乗り方は、都内を運行している均一料金のバスと同じ乗り方です。
- 前から乗る。
- 料金を運賃箱へ。
- 次の駅で降車する場合はボタンを押して、後ろから降りる。
もう、電車っぽいバスですね。笑
なお注意点ですが、王子駅前駅のような一部の駅では、ホームの入り口に駅員さんが立っているのでその場で先に支払いを済ませます。なぜ駅によって違うのかは、恐らく混雑する駅は乗り降りをスムーズにするためだからでしょうね。
あと、もし支払いが小児運賃や割引運賃である場合は、先に運転手さんに伝えましょう。
都電荒川線の運賃や支払いについて

これで払えるかな…?
都電荒川線の運賃
- 大人【12歳以上(中学生以上)】…170円(IC165円)
- 小児【6歳から11歳(12歳の小学生も含む)】…90円(IC82円)
※1歳から5歳の幼児に関しては、大人か小児が同伴する場合は2人まで無料で、3人目から小児料金が必要。もし幼児だけで乗る場合は小児運賃、1歳未満の乳児は無料。
王子駅など一部例外はありますが、都バスと同様に車内に入ったら運賃を先に支払います。お札に関しては千円札のみ使用でき、おつりは料金機から出てきます。五千円札と一万円札は使用不可なので事前に両替が必要です。なお、二千円札は…不明です。笑
またSuicaやPASMOなどのICカードの利用も可能です。領収書が欲しい方はICカードのチャージ時に発行しましょう。
このほかにも回数券、定期券、割引運賃、それに一日乗車券もあります。
回数券
回数券はちょっと複雑で、よくある「10回分の料金で11回分乗れる」というタイプとは違います。
回数券には2種類あって、どちらも1,000円で1,120円分の発券額。
- (170円券×6)+(100円券×1)
- (90円券×12)+(40円券×1)
大人料金用と小児料金用で2種類展開されているのはわかりますが、なぜ100円券や40円券という中途半端なものがあるのかよくわかりません。170円券を7枚だと予算オーバーで、6枚にしたらお得にならないからなのでしょうか。もしくは端数があることで「もったいないから都電に乗ろう!」と思わせる作戦なんでしょうか。

そんなんじゃ人の気持ちは動きませんけどねっ、もっとシンプルにしてよ!
ちなみに端数の使い方は現金と併用です。100円券と小銭70円を併せて支払って1回乗ることができます。やっぱこんな面倒なことをするくらいなら170円券を7枚つづりで1,000円とかにしてもらった方が便利な気がするんですけどね。
一応170×6=1,020、90×12=1,080なので、端数券を使わなくても損にはなりません。
定期券と割引運賃
他の電車等と同じく通勤定期や通学定期があります。都電荒川線で珍しいのは、通勤定期券を活用すると家族が割引になるんです。
- 通勤定期券のみ対象で通学用では対応していない
- 通勤定期券を持つ本人が同伴する場合で、同居する家族のみ対象
- 対応しているのは土日祝日とお盆期間、年末年始
- 1乗車大人100円、小児50円(現金のみ)
- 定期券の区間外でも対応
- 利用する際は乗務員に申し出ること
休日に家族3人で定期券区間内に出かける場合、片道料金がお父さんは定期券で実質無料、お母さんは100円、子供は50円で出かけられます。お父さんの定期区間外でも、お父さんの料金が100円に割引、お母さんと子供は同様に100円と50円で乗ることができます。
大きな金額ではないかもしれませんが、週末に頻繁に出かける家族にとってはありがたいサービスですね。
都電一日乗車券
都電荒川線を一日乗り放題にできる乗車券には以下の3つあります。
- 都電一日乗車券
- 都営まるごときっぷ
- 東京フリーきっぷ
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
都電一日乗車券
「都電一日乗車券」は400円(小児200円)で購入できるので、観光などで一日で3回以上乗るであろう場合は絶対にお得。一日かけて荒川線沿線巡りをするのも楽しそうですね。
都電一日乗車券は、営業所や定期券発売所の他に車内でも販売しているので、乗る際に運転手さんに一日乗車券が欲しいと伝えましょう。しかもsuicaやpasmoなどのICカードでも対応しています。
そしてさらに、ICカードでは対応していないのですが、都電一日乗車券を提示すると割引などの特典を受けることができます。
例えば、あらかわ遊園は入場無料になりますし、飛鳥山博物館などは入場料が割引になります。特典を受けたい場合は対応する施設の窓口で一日乗車券を提示してください。
しかも、都営地下鉄や東京メトロ沿線の施設などで割引などの特典を受けられる「ちかとく」のサービスも受けられます。ちかとくの詳しい特典は、地下鉄の駅などにあるガイドブックに載っています。
こんな特典があるんだったらICカードではなく紙ベースの一日乗車券の方がいいですね。
都営まるごときっぷ
「都営まるごときっぷ」は、荒川線の他に都営地下鉄、都バス、日暮里・舎人ライナーにも乗ることができるタイプ。料金は700円(小児350円)で、深夜バスを使う場合には差額が必要になります。
荒川線だけでなく都営地下鉄を使って、いろいろなところに行ってみたい人にはおすすめ。購入は都バスや都電の車内、都営地下鉄の券売機でできます。またこの「都営まるごときっぷ」でも「ちかとく」のサービスを受けることができます。
東京フリーきっぷ
「東京フリーきっぷ」は、さらに東京メトロと都区内のJR線も一日乗り放題になるもの。料金は1,590円(小児800円)で一日いろいろと乗ることができるので、都区内を見て回るのにはとても便利。
ただ範囲が広すぎる分、「都電荒川線を楽しむ」という視点だけで言うと、わざわざ「東京フリーきっぷ」を購入する必要はありませんね。
実際購入にあたっては都電の車内はもちろんのこと、都電営業所でも購入できません。購入する場合はJRのみどりの窓口や東京メトロ、都営地下鉄の駅で購入することになります。また「ちかとく」のような特典はないようです。
都電荒川線の運行と時刻表、終電は?

住宅街を通る荒川線
運行は1両編成の、運転手さんのみが乗っているワンマン運転になっています。車掌さんは当然乗っていません。ですので運転手さんは運転の他に運賃や一日乗車券などのやり取り、車内放送の操作も行っています。
各駅においても、忙しいときの王子駅前駅以外は駅員さんはいません。こういった側面から見ても路線バスのような特徴が強いですね。
運行間隔に関しては、日中は大体6分程度の間隔で運行されています。そんなに長時間待つ必要もないので、時刻表を細かくチェックする必要はありませんね。
また朝夕の通勤帰宅ラッシュの時間帯はもう少し間隔が短くなって2分から5分ほどになり、早朝・深夜の時間帯には10~15分くらいの感覚になります。
それでも細かく確認しておきたい場合は、各駅の時刻表をこちらの東京都交通局の時刻表であらかじめチェックしておくといいでしょう。
ちなみに、終電は早稲田駅発荒川車庫前行きで23:04、三ノ輪橋発荒川車庫前行きで23:14分となっております。
都電荒川線は愛称「東京さくらトラム」?
さんざん「都電荒川線」と書いてきましたが、実は公式の愛称があるんです。それが「東京さくらトラム」。これは沿線の活性化や外国人観光客にもわかりやすくするために決められたもので、2017年4月に決定されました。
沿線には飛鳥山や面影橋などの桜の名所があるので「さくら」は間違いではありませんが、決定されてから年月が経っていないせいか、この愛称はそれほど定着していません。
私も「東京さくらトラム」という名称を知ったのは2018年になってからでしたので、現時点では一般認知はそれほど高くないのでしょう。長年「都電荒川線」で親しまれてきたので、新しい名前が定着するには時間がかかりそうです。
実際ネットなどでは「違和感しかない」「いや、バラでしょ!」「さくらトラムとして親しまれている、ってテレビで出たけど、親しまれているの?」「センスがない名前…」「10年後でも荒川線って呼んでいる自信がある」などの意見がありますので、もしかしたら定着することなく闇に葬り去られる可能性もありますね。

トラムとかイメージしにくい言葉をネーミングに使っても定着しませんよ。ってかトラムって何?⇒調べたら「路面電車」でした。
都営荒川線沿線の見どころ
それではここからは都電荒川線、いや東京さくらトラム沿線の見どころを紹介していきたいと思います。是非ぶらり途中下車の旅を楽しんでくださいね。
荒川線沿線の主な名所
- 桜(面影橋駅)
- 鬼子母神(鬼子母神前駅)
- 巣鴨地蔵通り商店街、とげぬき地蔵(庚申塚駅)
- 飛鳥山公園(飛鳥山駅・王子駅前駅)
- 王子音無親水公園(王子駅前駅)
- 都電思い出広場(荒川車庫前駅)
- あらかわ遊園(荒川遊園地前駅)
- バラ(荒川車庫前駅から三ノ輪橋駅沿線)
桜
愛称になった桜の見どころのひとつが面影橋付近。電車に乗って車窓から眺めるもよし、早稲田から学習院下までの道を神田川に沿って歩いてみるのもよし。散歩しながらだったら、サンシャインを背景に写真を撮ったり、都電と桜の写真を撮ったりとできますね。
鬼子母神
安産や子育(こやす)の神様・鬼子母神をまつっているところ。漢字では変換できないのですが、正式名称は「鬼」という漢字の上の点がない文字を使います。
本殿などのお堂も見ごたえがありますが、ひと際存在感があるのが、樹齢700年を超えるという大公孫樹(おおいちょう)。駅から広がるケヤキ並木も樹齢400年と自然の雄大さを感じられる場所。
巣鴨地蔵通商店街、とげぬき地蔵
言わずと知れたおばあちゃんの原宿、「巣鴨地蔵通商店街」の北側の入り口が庚申塚駅です。商店街で休憩をしながら、とげぬき地蔵を始め近隣にある他の史跡をまわるのもいいかもしれませんね。

都電とピッタリな雰囲気出ちゃってます。
飛鳥山公園

可愛いミニサイズのモノレールがあります
江戸時代から続く桜の名所。桜の時期はもちろんのこと、5月6月でもツツジやアジサイなどの花で楽しませてくれます。夏の緑や秋の紅葉など、一年を通して自然を感じさせてくれる場所。
また複数の電車を見下ろせるので電車好きからも人気の場所。その他にも飛鳥山博物館・紙の博物館・渋沢資料館もあり、見どころはたくさんあります。
王子音無親水公園
飛鳥山公園から、明治通りを渡ってすぐのところにある王子音無親水公園。こちらも桜や紅葉など自然と触れ合うことができます。そして親水公園ですので水遊びできるのが魅力。周りを木に囲まれながらせせらぎで遊ぶのもいいですね。親水公園の奥に行けば、開運徐災の王子神社もありますので、併せてお参りしていくのもいいですね。
都電思い出広場
土日祝日しか開いていませんが、荒川車庫前駅を降りてすぐのところに「都電思い出広場」があります。停留所をイメージした空間に都電の旧型の車両を展示。もちろん中に入ることができるし、その中には都電が活躍していた昭和30年代のジオラマもあります。大人には懐かしく、子供には新しい風景ですね。
車庫の電車を眺めることもできますので、電車好きの子供にはたまらないスポットです。
あらかわ遊園
大正時代に開園した都内唯一の公園遊園地。ちびっこ広場や子どもプールなど主に子供を対象とした遊園地なので、大人のカップルというよりはファミリー客がメイン。
動物と触れ合えるコーナーもあるので、都会で暮らしていて動物との接触が少ない子どもには新鮮な場所ではないでしょうか。
バラ
桜と並んで有名なのがバラ。特に荒川車庫前から三ノ輪橋駅の区間の線路わきに多く咲いています。これらのバラは「荒川バラ会」などのボランティアによって整えられているんだとか。
バラは桜と並んで荒川線のシンボルになっていて、荒川区は区を上げて緑化に努めています。見ごろは5月中旬から6月上旬と、10月中旬から11月上旬。

「東京さくらトラム」じゃなくて、そこは「東京ばらトラム」でしょ!
最後に
JR線や各種私鉄、地下鉄線に比べるとマイナーな位置づけの都電荒川線、いかがでしたでしょうか。バスのような感覚で気軽に乗ることができますし、価格も安い。しかも一日乗車券もあるので観光で使うのも便利です。
荒川線に乗って名所に遊びに行くのもいいですが、何といってもその雰囲気が一番の魅力と言えるのではないでしょうか。住宅密集地の中をのんびりゆったりと通るのどかな風景。車窓から見える桜やバラ。レトロな雰囲気の駅や沿線の街並み。そして自動車と並走しての運行。
ただ乗っているだけの1時間の旅でも、普段の都会の喧騒だけで生活している人から見たら、まるで異世界のようないろんな東京の側面を見せてくれます。是非一度、都電荒川線、改め東京さくらトラムに乗ってみて下さいね。
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