みなさんは「都営住宅」を検討したことはありますか?都営住宅とは、簡単に言えば住居に困っている所得が少ない人に対して、安い家賃で貸している公営住宅(東京都:都外では県営住宅)のことを言います。都営以外にも市営住宅・区営住宅(市区町村)もあります。
誰しも、生活費の中から「出来るだけ家賃を減らしたい!」と考えるのは言うまでもありませんよね。公営住宅なら平均的な家賃相場よりも低価格で借りられるというのはすでにご存じだと思います。
ですが、手続きが面倒だったり条件が厳しかったりして、「簡単に借りることはできないんじゃないか?」なんて思う人も多いと思います。
そんな方のために、今回は都営住宅について説明をしていきたいと思います。気になる家賃相場はどれくらいなのか。入居するためにどんな条件が必要になるのか。
また、併せて区別が紛らわしい都民住宅やUR賃貸住宅についても触れていきます。
是非参考にしてくださいね。
都営住宅って、いったいどういうもの?

画像はイメージです
都営住宅は、1951年(昭和26年)の公営住宅法に基づいて運営されている公営の住宅のこと。基本的には団地になっています。(一部例外あり)
所得が少なく、住宅に困っている生活面で弱者的な立場な人への救済措置的な住宅。いわゆる地方自治体が定めるセーフティネットのひとつです。ですので、生活保護受給者も住んでいます。家賃も相場より安く、礼金や更新料、仲介手数料がかからないのが大きなメリット。
民間の集合住宅とは違いますので、「ここに住みたいです。」「では、お金をお支払いいただき、サインをしてください。これで来月1日から住めますよ。」という簡単な流れで決まるものではありません。
まず都の募集に対して応募をして、それに当選する必要があります。入居資格に関しても所得が高くないことだけでなく、都内に3年以上居住しているか、現在の住居に不便している(入居人数に対して狭いとか、老朽化など)といったことが挙げられます。
また応募に当選しても、すぐに「では、ここにお住み下さい。」となるわけではありません。ここで言う当選は「審査される対象に当選した」ということであって、場合によっては審査の結果「資格なし」になることも…。
これだけ読むと、とっても面倒くさいと思うかもしれません。ですがうまく住居が見つけられれば、低価格の家賃でそれなりの物件に住むことができる大きなメリットがあります。
所得が低いという条件はありますが、極端に低い人でなければ入居できないことでもありません。中には若年夫婦・子育て世帯向けの募集もありますし、子供の人数が多ければ多いほどハードルも低くなります。
都営住宅の家賃について

あくまでイメージです
では都営住宅の一番のメリットである家賃に関して見ていきましょう。以前は定額制だったのですが、今は入居する世帯の所得に応じて細かく設定されるようになっています。
ここで重要なのが「年収ではなく所得が基準」であること。まず所得額に応じて4段階の「家賃算定基礎額」に分けられます。そしてその基礎額に「立地係数」「規模係数」「経過年数係数」「利便性係数」というものを掛け合わせて算出されます。
それぞれの係数の数値がいくつになるかは、当然物件によって変わるのですが、目安は近隣物件の1/2~1/3くらいになります。
- 家賃=「家賃算定基礎額」×「立地係数」×「規模係数」×「経過年数係数」×「利便性係数」(それぞれの係数は物件ごとで変わる)
- 相場は近隣物件の1/2~1/3
さらに家賃の減免制度もあります。申請をしないと減免されないので、あてはまる人はすぐに申請をしましょう。
減免には一般減免と特別減免があります。一般減免は認定所得月額が6万5千円以下の世帯が対象で、該当すれば10%~75%が減額されます。急に退職することになった場合、まずはこの制度で月の必要経費をさらに減らしましょう。
特別減額は、未就学児がいる母子世帯や、要介護の65歳以上の高齢者がいる世帯などが該当し、認定所得月額が15万8千円以下の世帯が対象。該当すれば1/2に減額されます。シングルマザーで、アルバイトでは手取り15万も稼げない人もいるでしょうから、この減免制度はありがたいですね。
注意があるとしたら、家賃は収入に応じて変わるということ。毎年6月頃になると、収入報告書を提出するよう封書が届きます。これに必要事項を記入し必要なものを添付して提出しなければいけません。提出した書類をもとに翌年度の家賃がいくらになるか、通知書が2月頃に届きます。
万が一この収入報告書を提出しなかった場合、近隣の物件と同じくらいの家賃を支払うことになります。また収入が大幅に増えた場合も同様に同じぐらいの金額を払うことにあります。
そして最終的には明け渡し請求が行われます。本来が低所得で困っている人のためのものなので、当然と言えば当然なのですが。
家賃以外に必要な費用
都営住宅で暮らす場合、敷金・礼金、そして仲介手数料は必要ありません。そして部屋の更新の時にも更新料は必要ありません。これがないだけでも、民間の賃貸物件よりもかなりお得ですよね。
ですが、敷金と同じような位置づけの「保証金」が必要になります。金額としては家賃の2ヶ月分。そして「保証人」も必要になりますので、都営住宅に暮らすことを検討し始めた段階で、保証人になってくれる人を探しておきましょう。
都営住宅の入居者募集について

募集状況を調べておきましょう
それではここからは、都営住宅に住むまでの流れを見ていきましょう。入居するためには、まず募集に対して応募をしなければいけません。
応募には年4回の定期募集と、一定基準(若年夫婦や事業再建者など)がある毎月募集があります。また当選は先着順ではなく抽選方式かポイント式で決められます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
定期募集
年に4回行われている募集。
- 2月上旬…家族向け(ポイント方式)、単身者向け・シルバーピア(抽選式)
- 5月上旬…家族向け・単身者向け(抽選方式)
- 8月上旬…家族向け(ポイント方式)、単身者向け・シルバーピア(抽選式)
- 11月上旬…家族向け・単身者向け(抽選方式)
年に4回行われていて、2月と8月、5月と11月が同じ内容の募集ですね。家族向けと単身者向けは、文字通りに家族向け・単身者向けの募集です。
シルバーピアというのは高齢者に配慮されている住宅の募集です。配慮具合は物件によりますが、手すりが付いるとか福祉対応型エレベーターが付いているなどがあります。他の高齢者との団らん室が付いているところもあるようです。
毎月募集
定期募集で比較的低倍率な住宅に対して募集をしているもの。毎月中旬から下旬に募集しています。家族向けの募集で抽選方式。
一定の条件にあてはまる世帯が対象で、それは以下の通り、
- 若年夫婦・子育て世帯
- 都営住宅の定期使用許可日から5年が経過した世帯
- 事業再建者世帯
- 東日本大震災の被災者世帯
- 大規模災害等被災者世帯
定期募集でもなかなか入居者が決まらない住宅に対して募集をしているものです。定期募集よりも対象世帯が細かく制限されていますね。
抽選方式とポイント方式
- 抽選式は文字通りに抽選で当選者を決めるもの。完全なランダムで決まります。
- ポイント式は住宅状況申告書により困窮度を判定。困窮度が高い人から順に決めていくもの。
ランダムで決まる方式だけではなく、困窮度に応じて優先度を付ける方式を併用しているようですね。
抽選方式は完全に運になりますので、もし抽選方式の時に選ばれなくても、ポイント方式の時に困窮状況を訴えれば受かるかもしれませんね。また毎月募集は家族向けの定期募集と併せて申し込むことができるようです。
申込書は期間中にダウンロードできるほか、都庁や区役所、東京都住宅供給公社などで配布しています。
都営住宅の応募資格は?

基準は年収ではなく所得(手取り)
募集に対しては、だれでも応募できるわけではなく所得が一定基準であるなどのいくつかの条件がありますので、それについてみていきましょう。
基本的な申し込み資格
- 東京都内に居住していること
- 同居親族がいること
- 所得が定められた基準内であること
- 住居に困っていること
- 暴力団員でないこと
これらが基本的な資格で、単身者向けになると「60歳以上などの要件にあてはまること」という条件が加わります。また募集時期で異なることもありますので、その都度しっかり確認しましょう。
上の中で特に気になる条件について、もう少し見ていきましょう。
所得基準について
家族人数によって所得の基準が変わります。
- 1人…0~1,896,000円
- 2人…0~2,276,000円
- 3人…0~2,656,000円
- 4人…0~3,036,000円
- 5人…0~3,416,000円
- 6人…0~3,796,000円
7人以上の場合、1人増えるごとに38万円を加算してください。
これが応募資格がある所得の基準です。上でも少し触れましたが「年収ではなく所得(手取り)が基準」ですので、そこまでハードルが高くはないと思います。さらに障がい者や18歳未満の子供がいれば、ハードルはもっと低くなるんです。
住環境について
住居に関して困っている人への救済的な制度ですので、住環境も応募資格に関係します。その一番の目安が面積です。
入居人数によって面積の基準が変わります。
- 2人…29m2未満
- 3人…39m2未満
- 4人…50m2未満
- 5人…56m2未満
- 6人…66m2未満
- 7人…76m2未満
面積以外にも住環境が良くない事柄があるほど、住宅に困っているということになります。特にポイント方式に応募する場合は、建物の老朽化やそれに伴う雨漏りなど、日照時間、通勤時間などの、住んでいて不便になることをまとめておきましょう。
都営住宅に応募した後の流れ

全体的な流れを把握しましょう
応募した後の流れは、大まかに次の通り。
- 応募する
- 抽選番号のお知らせが届く
- 抽選が行われる
- 抽選結果のお知らせが届く
- 当選者の審査が始める
- 合格通知が届く
- 入居予定住宅のお知らせが届く
- 入居説明会
- 住居の下見
- 入居手続き
ステップは10個ですが、時間はかなりかかります。2月の募集だとすると、3の抽選が3月下旬ころになり、5の審査が6月から7月にかけて行われるスケジュール。
あくまで抽選は審査段階へ進むことに当選しただけですので、審査次第では「資格なし」にもなりえます(言い換えれば困窮していない環境だということ)。
そして審査合格後の入居予定住宅のお知らせですが、数か月から半年、場合によってはそれ以上かかります。というのは「部屋が空く見込み」の段階で募集をするので、すぐに部屋が用意できるとは限らないからです。
ポイント方式の場合は抽選ではなく申込書の審査になり、多少スケジュール日程が早くなりますが、1ヶ月変わるかどうか。トータルすると早くても半年以上はかかってしまうので、長期戦を覚悟しないといけませんね。
都営住宅のメリットとデメリット

メリットとデメリットの把握は重要
都営住宅は家賃以外にメリットが、そして反面デメリットもありますので、簡単にまとめておきます。
都営住宅のメリット
- 民間の賃貸住宅に比べて間取りが広めな傾向
- 敷地(団地)に余裕があり、公園や広場があるところも
- 鉄筋コンクリートの建物が多く、耐震性も高め
- 古い建物に対しても、都が耐震化プログラムを進めている(驚くほど綺麗にリフォームされている物件もある)
いくら安いところだからと言っても劣悪な環境というわけではありません。もし環境が悪かったら、それこそ住宅に困っている人への救済になりませんからね。まるで公営住宅と思えないほどの綺麗な新築マンションもあります。
都営住宅のデメリット
- 自治会の仕事がある
- 住民の質が悪いかもしれない
- ペットは飼えない
- おしゃれな建物や部屋ではない
- 場所を選べない
民間の賃貸住宅ではないので管理会社的な存在はありません。そのため住宅近辺の掃除当番があったり、定期的に会議があったりする地域も。自治会長も持ち回りで回ってくるでしょうし、自治会費の集金をすることも。
そういったことを「お互い様」とみんなで協力できればいいのですが、中には非協力的な住民も。ごくごく一部ではありますが、人としてのクオリティがアレなために収入が厳しくて都営住宅に流れ着いた人もいます。生活保護受給者も少なくありません。
また、ペットは飼えませんし、建物もコンクリートでできたおしゃれさは皆無なつくり。部屋も前の住民が出た後のリフォームはするでしょうが、おしゃれな雰囲気を期待できるものではありません。ただ、最近では築年数からの耐久年数の関係で建て替えやリフォームをして、驚くほど綺麗になっている都営住宅もあります。
そして場所や部屋を選ぶことができません。応募の段階で「この地区に応募する」と地区は決められますが、具体的な建物、その中の具体的な部屋は自分では決められません。「絶対に角部屋がいい!」なんていうのは、都営住宅に住む場合は求めてはいけない要望なんですね。
都営住宅とは異なる『都民住宅』や『UR賃貸住宅』は何?

しつこいですが、イメージです
都営や市営といった公営住宅とは異なる、『都民住宅』や『UR賃貸住宅』というものもありますのでここで簡単に紹介します。
都営住宅には入れそうにもないけれど、それでも少しでもお得なところを見つけたいという人は、是非選択肢に入れてください。
都民住宅
都営住宅と似ている名前で「都民住宅」というものがあります。こちらは「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に基づいて、広さや設備などが一定の基準で建設された、中堅所得者向けの特定優良賃貸住宅のことです。
都営住宅は所得が低く住宅に困っている人が対象なのに対し、都民住宅は中堅所得者が対象となっています。都営住宅と同様に礼金・更新料などが不要。世帯所得や住宅に応じて家賃の補助が受けられることもあります。
入居者が実際に支払う金額に対してクオリティが高い部屋に住むことができるので人気の物件。現在は新規で都民住宅を建てていないようですので、待機者募集に応募して部屋が空くのを待つしかないようです。応募しておくことで、部屋が空き次第順番にあっせんされていきます。
入居資格としては、特例を除き二人以上の家族で、所得金額が基準の範囲内であること。基準は家族人数で変わりますが、夫婦と子供一人の三人家族の場合、年470万円から1000万円くらいが範囲。
UR賃貸住宅
独立法人の都市再生機構(通称:UR都市機構)が管理する住宅のこと。礼金や更新手数料、仲介手数料がかかりませんし、保証人も必要ありません。
広大な敷地の大型な団地が一般的で、築年数は古い傾向があります。家賃相場は近隣の民間マンションなどと大きく変わりませんが、便利な制度がありますので、それらを活用すればお得になります。
例えば家賃をPontaで払うと家賃500円ごとに1Pontaポイントがたまる「URでPonta」という、そのまんまのネーミングのサービスがあります。他には、子育て世代だと条件次第で家賃が安くなる物件があるなど、いくつかのサービスが用意されています。
入居は基本的には先着順になっているので、興味がある地域で空きがあったら申し込みをしましょう。基本的な条件としては、世帯の月収が家賃の4倍あること(家賃6万円なら24万円の月収)。ただし家賃が高い部屋の場合は、4倍ではなく月収〇〇万円以上と固定額なります。
まとめ
都営住宅をはじめとする公営住宅は、家賃を安く抑えられるのでとてもありがたい存在。ですがその分入居するまで時間がかかりますし、資格制限も付いています。それなのに抽選が行われるということは、それだけ希望者が絶えないほど「家賃の安さ」に魅力がある住宅だということですね。
入居場所を細かく選べないなどのデメリットもありますが、住めば都とも言いますし、生活環境に困っている人は都営住宅を検討してもいいのではないでしょうか。
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